ブルオ

ドイツの冬は
幾重にも折り重なった夜みたいに分厚い雲が空を覆っていて、
病む人々が多発する。
医者は日焼けサロンの処方箋を出す。

 

、、日サロでええんや。人間の体。
島尾敏雄いうところの「うそさむい」ではなくて、
ドイツのは、なんていうか、「ほんとさむい」。

 

脳みその裏側、眼球の奥あたりにチっちゃいおっさんが住んでいて、
「さむい?さむい?」
とウカがい語りかけてくるのに、
「うん」「うん、さむい」と
いちいち返事をしなきゃならない種類の寒さ。

 

ちっちゃいおっさんは、いっつも投げっぱなしで
こっちの答えなんか、とくに興味もないのだ。

 

街は今日もあたたかく肥えている。

 

こっちの答えなんか、とくに興味もない。
質問にも、あんまり意味はない。