ンボブ

ハンドパワーみたく
手の平をおかしな形に組み合わせたドイツ人が、
電車の中で話しかけてきた。

 

「Entschuldigen Sie, bitte. (あのさ) 」

 

ん?なに?

 

「Sind Sie Japanisch??(きみら 日本人??)」

 

うん。

 

「Wissen Sie ein Insekt ? wie so…. nur in JAPAN .」
(虫しらん? こんくらいの、、、日本にしか おれへんやつ。)

 

虫て。

 

「Es heisst “BUSHID”」
(ブシド いうやつやねんけど)

 

ブシド?? なにそれ、しらん。
カズさん、しってます?
ですよね、そんなん知りませんよね。

 

「Echt !? 」
(うそっ)
【おまえらホンマ日本人?モグリちゃうのん?ていう顔】

 

それから彼は突然、
ジェスチャーをまじえ、熱っぽい動きで説明を始めた。
めんどくさいので以下、ドイツ人大阪表記。

 

「ここにこう、(と下腹部を指さす)
人の体に 巣くうやつやん。
知っとーやろ?」

 

!! 人の体て。寄生虫なん?

 

「そうそう、昔からいるらしやん、日本には。
こう、人の腹の中でスんごい暴れる。
昔の日本人、そいつが暴れ出して耐えきれなくなって
だから、ハラキリとかやったんだろ?
ミシマとか。」

 

、、、。

ブシドて。それ、、もしかして武士道?
それさ、虫やなくて、日本人のスピリットのことやで。

 

「!!! ん?? いや、おれ友達に聞いとるんや!?」

 

それきっと、メタファーや。 喩え。

 

「メ?? メタファ??
なんやチョウまってくれ、手に書いとくわ、
もっかい言って!
なんか今日、誰かオレにおんなじ事 言うとったぞ!?
メ、、タ、、フ、、ァ、、、。で、どういう意味?」

 

たとえ。 わかりよく日本人の心を 説明したんちゃうかな。

 

「がっ!
わしもう降りなあかんやん電車。
DANKE !!! (おおきに)
メ、、、、タ、、、、フ、、ァ と。」

 

ほんとうに 友達は、「虫」って言ったんだろうか。
虫好きがこうじて虫を名乗った手塚治虫になぞるには、
男はあまりに、うっかりがすぎたので
代わりに、日本と虫をこよなく愛す彼にはボブ(虫)で。

 

ボブ、おれらも、虫、飼ってるよ、腹の中に。
だいぶんうすまってるけど。
水やりすぎて、ふやけて へにゃへにゃ やけど。

 

でもまだ たぶん、生きてる。
たぶん。