カミナリ・ロンドン・見透かされた具体的なこと
雷が鳴ったので、電源をおとして上にあがった。
やることがないので、庭の向こうの森をながめた。
バキバキ光る空。
煙草の煙が、白々しい。
雷、ずっと鳴ってりゃいいのに。
死がゴールになる人生では、唯一 “時間軸上で最も早くゴールにつくこと” が勝利にならない。
雨がやんで、とっととそんなことを忘れ、地下の電源をいれる。
「いま、なんて言った?」て問うと
隣で作業していたイギリス人の女の子は、五輪のマークを紙に書いた。
ロンドンのテロの話をしてた。
『あんまりうまくないけど、わかったかしら? オリンピック。』
5つの輪は、本当にあんまりうまくなかった。
よれすぎてそれは、もう世界の祭典の象徴なんかではなかった。
本物だってどうなんだか、わかったもんじゃないけど。
自分が死体になった後の世界に、嘘つきたくない。
思いついた “いいこと” が、とうに誰かや何かの過去であっても、それがないと過去も現在も未来もない。
思いついたら、ちゃんと笑わないかん。
雨がやんでも、忘れたあかん。