baguette

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太った少年がやってるバゲット屋によく行く。
(バゲットにトマトとかチーズとか肉とかいれて焼いたやつ売ってる)

ふくよかな人間がやってる食べ物屋を、無条件に信頼している。

太ってることって、食への愛の揺るがぬ証拠に見える。

顔がまがるくらい不味いのや、満足できない不親切なアマウントに出くわしたことがない。

 

イタリア系のふっくら少年は、ノキ下でゲームボーイに執心。

こちらが挨拶すると、無表情にレジに入り 黙って注文を待つ。

 

店長であるはずの父親は、大体おらんのでここはもう少年の店だ。

親父は隣のトルコカフェでトランプしてる。

働けよおまえ。

 

少年は注文を聞くと、手慣れた手つきでパンをオーブンに放り投げる。

トマトを切って、チーズをほぐし、いっぱいひっついた鶏肉のパテをパックから丁寧に3枚取り出す。

 

無駄がない。

あどけない顔には表情もない。

 

ヒトに愛されるニンゲンゆうのは、いつだって大抵その理由が見あたらない。

煙草を吸いながら、少年がオーブンについたタイマーと焼き具合を眺めるのを見ている。

、、いや、いつもこげてるぞ。そのタイマー、設定おかしい。

 

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金髪のグラマーな女が、その存在を不動のものにする強烈なフレグランスの渦と共に入ってくる。

少年の顔つきが変わる。

少年は、あからさまに動きの機敏さを増す。

しかも、なんかちょっと微笑んだ。

おい!おまえ!笑えるのか!

 

『サラダ、いれる?(いれたくない嫌いな野菜とか)注文ある?』

 

お、おまえいっつもそんなこと聞かずに全部いれるだろ!

日常は、揺るがない。

この視界のソトガワで起こりうるナニモノをも凌駕する、圧倒的なフツウの日々。

すすめ、少年。童貞はいつでも非童貞になれるけど、非童貞は二度と童貞になれないんだぞ。

 

先達ぶって偉そうにニヤニヤしてると、めっさ熱いバゲットをジカに手のひらに置かれて、『あづっ』なる。

床に転がるバゲット。

金髪ギャル、笑う。

 

もちろん少年はこっちを見ていない。

なんかちょっと赤くなってる。

てめえ。

 

隣のトルコカフェから、少年の父親によるラテン特有のテンション高い笑い声が響く。

どうやらトランプでバカ勝ちしてるらしい。

 

地球が滅亡するアカツキには是非、このバゲット屋のバゲット食べたい。

ここには説明の必要な本当や、ウソがない。

 

ような気がする。