マーカ
『なおりますよ。』
物珍しそうに後ろからホウケづらをかましていると、
工具と音叉でカチャカチャやってたピアノ技師が振り返って言った。
アトリエに以前住んでいたピアニストが
”もうこれ、古すぎて調律できないから” と
残してったピアノ。
田舎町の酒場から引き上げたというソレは、
ミスタッチしても、それなりに聴こえるという魔法のような音色が気に入ってたけれど
10kHzくらいキーが落ちてて単品以外でレコーディングに使うのが難しかった。
もう直らないのかと思ってた。
『ただ弦が相当古いので、結構切れるかもしれません。』
2重巻きしたバス弦(このピアノだと下から2つめのB以下)は一本40ユーロちかくするらしく、
調律はロシアンルーレットばりに緊張しそうな予感。
調律の日には、救心を持ってこう。
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午後からは、Leeとの打ち合わせ。
相変わらずドイツ語、さっぱりわからない。
英語と混ざって、誰にも通じることのないオリジナル発言を連発。
向こうのイントネーションも大概オリジナルやから
お互い独り言を言ってる感じで、会話としては不自然極まりない。
ただ、意味がわかったところでそもそもヒトの話なんて聞いてなく、
あんまりストレスは感じない。
それはどうなのか。
LeeとのコラボレートDVD+CDの発売が、ノビノビになっている。
作品の質と時間、それがそこにあるべきタイミングって
意思やモチベーション、ガッツだけじゃどうにもならない。
シーソー。
向こう側で花子ちゃんが飛べば、
こっちはものすごいイキオイで支点に向かわないと
したたかにケツ打つことになる。
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打ち合わせのあと、カズ氏とセッションをレコーディング。
レコーディングのあと、
デュッセル在住のアーティスト、サトウマサハル氏と打ち合わせ。
次の彼の作品のモデルをすることになったので、
絵コンテを見せてもらう。
絵コンテの段階で、スバらしい完成度。
劇中の音のことなども打ち合わせて、
終電もなくなったのでそのままフラフラ散歩して
明け方ちかくに帰宅。
頭に白ビールと共に残る、様々な考えをまとめようとして、
赤ワインのボトルをあける。
『まあ、若いからやろ』
じじいみたいな結論を出して
言い訳のように爆睡。