ディトア

005RaumPl3.jpg

 

朝っぱらから、インキーした。

 

ドイツ住居はオートロックで、

鍵を忘れると、後は外で寝るしかない。

 

アトリエに業者が来る約束の時間が迫ってたので、

とりあえず駅まで走って電車に乗る。

 

あ。

 

アトリエの鍵もキーホルダーにつけたまんまだった。
(そりゃそうだろ)

 

カズ氏に電話。

彼は今日Klausのスタジオでミックスする日で、まだ家にいた。

 

もっかい電車のってカズ邸へ。

嫌な顔ひとつせず、仕事前に時間割いてくれた。感謝。

電話の声、もっそ面倒くさそうやったけど。

ごめん。

 

こんなことがあった時の為に、氏に預けていたはずの

家のスペアキー。

 

『え?おれ今持ってないよ?』

 

あれ?

 

 

こないだのベルギーレジデンスのあと、

韓国のアーティスト2人をドイツに招待して、

家に泊まってもらってた時、鍵2ついるから

彼からスペアキー返してもらったんだった。

 

なんだこの説明くさい文章は。

 

『あ!お隣の花子チャンのお姉さんでシャイだけど

実はテコンドーマスターの行かず後家、花代さん!』か。

 

 

ドタバタしても家のドアは開かないので

とりあえずアトリエの鍵だけ借りて再び電車にのり

駅から走ってアトリエへ。

 

で連絡待つこと3時間。

 

、、、こねえ。

 

ドイツ人、すっぽかしと時間のルーズさにかけては

妥協を許さない。

完璧。

 

落ち着いて鍵をどうするか考える。

 

とりあえず、隣のおっさんに助け求めて

入り口(入り口もオートロックなドイツ)開けてもらって、

そのあと鍵屋の電話番号でも聞こうか。

 

あーおっさんまた『ところで、金貸してくれ』言いそうやな。

恩を売られるのイヤな恩人ベスト5。めんどい。

 

この3年、インキーしたことなんて、一度もなかったのに。

 

小学生の頃はよく鍵忘れてベランダから入って、

窓をガタガタ円を描くように揺さぶって

ありったけの達成感と共に帰宅してた。

もっと技を磨いておけばよかった。

 

おまわりさん、この男です。

 

なつかしい想い出に現実逃避しながら

いつまでたっても来ない業者を待った。

煙草を探してポケットをまさぐると、

 

ジャラ。

 

あら。

 

耳ノリのなつかしい。

 

あった。鍵。

 

しかもいつものポケット。

 

朝のヒラメキ、何。

 

カズさんごめん。

 

嬉しさ(てかゼロに戻っただけ)と苛立ちの入り交じるまま、

アトリエの業者を諦めて自宅に戻り、暖房エンジニアに電話。

 

こっちはびっくりするぐらいすぐ来た。

電話おいて、顔洗って洗面所でたら、もう入り口のベルが鳴った。

やればできる子なのか。加減を知れ。

 

去年の冬から、なんだかんだで壊れっぱなしだったハイツング(暖房)が

ついに直る。

20秒くらいで直る。

 

うれしくて、ひとり暫く、ホカホカしている。

あつい。

鼻血が出そうなほど、部屋があつい。

 

大粒の汗がとまらず、

頭が夜更かしした西村知美ばりに、ぼんやりする。

こんな部屋、住めない。

 

たまらず家を出てアトリエに戻り、昨日のつづきの作業。

さっき家戻ったときチェックした、憂鬱なメールにココロを奪われすぎて、

頭ぼーっとしたままマイクに向かってひたすら朗読ラップする。

 

目の前に転がってる瑣末な葛藤を、よこしまに笑い流したかった。

ちょっと考えられないくらいダメなのができた。

 

ダメ度的に振り切っていたので、これはおもしろいと思い

セーブしようとしたら、ハードディスクのエラーが出て消えた。

爪の先ほどもショックじゃなかったことが、ショックだった。