ブフタ

『ケ・セラッッッッッセラ〜〜〜〜』

 

隣のおっさんの爆音ヘキが、また突然発症。

分厚い壁の存在を疑うくらい、お腹にくる低音。

1小節に4度打つ固い衝撃が、花火みたいに夏の到来を祝う。

 

てか、年中や。おっさん。

 

24小節に1回くらい、もう一つ隣に住む男が壁を蹴る。

フロアは、男達の無言の衝突を繰り返しながら、怒濤の人間関係セッション。

煙草買いに行くついでに文句言おうとドアに手をかけて、ふと

 

「なんか、やなことあったんかな」

 

日曜日にはいっつも、サッカーで泥まみれになって帰ってくるおっさんの姿を思い浮かべた。

ビートに合わせて つまさき打ち、クツにかかとを入れる。

昼が長くなり、開け放った窓から吹き込む風には、すっかり色がなくなった。

 

『うっッっっっひょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』

 

唐突にとどろく、おっさんのおたけび。

 

はかばかしくばかばかしい気分になって、

文句も言わずに煙草を買いに行ったら、財布を忘れた。

 

外出を決心したカロリーが勿体無いので、ライン川まで散歩。

 

 

ドンッッ

 

 

お腹にくる低音。

 

どこかで本物の花火があがった。

 

なにかが本物のふりをして、静かに爆発したのかもしれなかった。

したたかな低音に、したうち。

 

どこかとおくの方で、酔っ払いがウタをうたっていた。

すごくいいうただった。