ハル

アトリエの時計が止まってて、
電話もまだ無いので、
そこはちょっとした世界の穴みたいになっていた。

 

真夜中にビール飲みながら、ガンガンピアノをたたく。
半分寝ながら、イルカの『なごり雪』熱唱。

 

田舎町の草臥れた酒場に置かれてたのを
無理矢理 引き取ったらしいその古いピアノは
チューニング、だだ狂い。

 

『掟は、わしじゃ』 と言わんばかりのその態度に、
ほんのり憧れる。

 

ずっと弾いてるので
だんだん音感が440kHzじゃなくなってきた。
脱力音感。

 

春が来て きみは また