アタマ

遠くから歩いてくる子供が
両手で耳をふさいでいた。

 

暗い気持ちになりそーだったので、
なんで彼が世界を拒むのか
考えない事にする。

 

家に帰って眠ると、夢をみた。
自転車で走りながら、いろんなことを諦めていた。

 

なくなってしまったものの中に、
見覚えのないものがたくさんあった。

 

目を覚まして、煙草を吸おうとすると
ドアをがしがしノックする音が聞こえる。

 

隣のおっさん、また金借りにくる。

 

ないっちゅうねん。何回目やねん。

 

おっさんと暫く、井戸端会議。 大家の愚痴。
うちのハイツング(暖房)結局この冬壊れっぱなしだった、と言うと
おっさんは、おれんとこも こないだ夜中に電源おとされた、と言った。

 

それはおまえがわるい。

 

夜中の3時に爆音で流された、おっさんの『カントリーロード』。
そのとき警察は、配電盤の電源を片っ端から落としたので、
ついでにうちの電気も落とされた。
ふぅ〜ん、という情けない音を立てて、
つくりこんだデータは『カントリーロード』に屠られた。

 

耳を両手でふさいでみる。

開いた窓からオンドのない風、心地いい。