ターボ

意図的に変人ぶったりするの みっともないし、
かといって良識ある市民をやると
なにかにつけ居心地の悪い思いが悔しいし。

 

だから計算とコンセプト、策謀を
できるかぎり排除してうかうかしてると、
輪をかけておかしなことになってくる。
屏風に描かれたトラとの戦い方を、
うんうん唸りながら考えてる。
トラは、そんなこと知らない。
屏風に描かれたその日からずっと。
そのトラを屏風から、追い出さないでほしい。

 

アトリエへの行きすがら、金髪のおじさんにナンパされた。
『ねえ、きみは美しい』
おおよそ、かけられたことのない、
そしてそのまま口説く相手に流用しようかと思う程
自意識にアッパーな言葉を、
おじさんは所構わず目をキラキラさせて繰り出してきた。
たのむ、凹んでるときの為に
そのコトバ録音させてくれ。
セルフもりあげに使うから。
三島由紀夫の『禁色』とか稲垣足穂とか、
ヘテロセクシャルは何かむしろ劣等感だったりしてまうけれど、
まあいいや。
困ったようなアヤフヤな笑みを浮かべてると、
おじさんはトットとどっかいってしまった。
どこかしら不自然に漂うその完璧な肉体のオーラ、
おじさんの背筋は、なにかを見据えたかのように
まっすぐだった。
ぼんやり信号を待つ欠落だらけの自我が、
だだっ広く、「焼け石に水」感の漂うこの世界に残される。

 

背中をまっすぐにして、歩いてみる。
おなら、でる。
いきおいで、わずかに前進。

 

ちょっと、、、もれてないだろな、いまの。