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祖父が死んだ。

一瞬、ふわっとゆがんだ気がしたけれど
涙はでなかった。

 

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最近、咳がとまらない。
近頃ドイツで流行ってるウイルスにやられたっぽい。

 

夕方、歯医者。
年末から何度も通って、
ようやく1本処置が終わる。
その神経は全て除去され
奥歯は今日、死ぬ。

 

ニンゲンの器官のなかで、唯一死骸のままカラダに残る事を許されてる歯。
舌で押してみると、まだなんもかもがそのままで
でも失われたテイでそこにあるんではなく
失われてしまったのだった。

 

失われてしまった歯と祖父が、
いつまでもカラダにぬるく刺さって
にぶく ぬくい。

 

日本に電話。
へんなカタチをした柔らかい棘が一粒、
受話器の小さい穴越しに、耳から脳味噌へ。
不意にアタマの上を覆う。
びりびり何かがほどけて
ちりちり眼前が歪む。

 

おじいちゃん、

声をあげて泣く。

 

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