カトルフィッシュと世界の終わり
11th – 13th May 2007
オランダ・ゼーラント スタジオにて
月末のレコーディング準備の合間、
オノウチ君が唐突に世界の終わりの話を始める。
『テレビで見たんだけど、サトシ君、世界の終わりて何が生き残るか知ってる?』
「知ってる人なんて世界の終わりまでおらんでしょう。」
『いやまあそうなんだけどさ。”イカ”らしいよ。最終的に。』
「、、イカ? あのイカリングの?」
『うん、そうそう。 ドシーン、ドシーン、てね。』
「ドシーンドシーンて。 何の音よ。」
『足だよ、足。イカの10本足。』
「えー、、、説明も無しに巨大化されても、、、 」
『マンモスみたいになるんだってよ。』
「マンモスみたいに。」
『ちっちゃいのもいるんだけどね。』
「あ、普通のもいるんだ。」
『やられちゃうけどね。でっかいのに。戦うけどやられちゃう。』
「戦うってどうやって? イカスミ?」
『いや、石。』
「石?」
『10本足で石を絡めて、空から石を落とすんだよ。』
「また説明もなしに飛んだ! イカだけでなく話そのものが!」
『フワーーっとね。』
「フワーーっとじゃないよ。イッタンモメンかよ。」
『まあちょっと前まで蜘蛛(クモ)が頑張ってたんだけどね。』
「世界の終わりのちょっと前、、、全体的にフワフワしてるな。物事の流れが。」
『でもクモが滅ぶまでイカは海で隠れてるんだよね。虎視眈々とその座を狙ってる。』
「いや、マンモスサイズで空飛べればもう勝てると思うよ。しかも、既に”隠れる”という考え方に失礼なくらいの存在感だよそのイカ。」
『んー。おそるべしだよね。イカ。』
地平線は遠く、突然強い風が吹いた。
ベンチを運び、リンゴの樹の下へ。
葉々を騒がす風ん中、
世界の終わりに空を飛ぶ巨大なイカのことを考える。
むやみにカサバるイカの姿とは裏腹に、
なぜだかそこはとても静かだった。