a superficial explanation

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そうして彼女は刻まれた。

 

こそぎ落とされた上腕と顎を見て、
彼女は通り一遍の愛想笑いみたいな絶望に打ちひしがれた。

 

『ぅぁーこれめっちゃもと戻らへんやん、ゆうて今思たやろ自分。
なんやろ。5分前何してたやろ。なんでこんなことになったんやろ。て。

 

なあ。

 

戻りたい?

 

これ戻せるくらいの希望て、いやそもそもそれ的なもんを抱く抱かない、ゆうことすら考えたことあれへん?』

男は悪意のない錆びついた目で、明るくハキハキと大きな声でそう言った。

 

あんまり声がデカくて滑舌がよかったので、痛みで閉じていた目を開けると
女の体は元通りになっていた。

 

別にそんなもん5分前には夢でもなんでもなかったが、
概ね何やら叶えてくれた感が満載であったので 女は男を愛した。

 

だからいつまでも愛していた。

 

二人はいつも互いを愛したし、慈しんでいた。

 

こそぎ落とされた上腕含む全ては、依然としてそこにあったけれど
それにさっきからそこいら中でなんか垂れてきていて とてもきたないし、臭うのだけれど

 

全てが『現在』を揺るがす動機に欠けすぎた。

 

平たく、伝わらなく言えば、まま関係あれへんのだった。

 

とても待ち遠しかったある日

空がとても遠かった。

 

生きとし生けるものを中途半端に孤独にしたその夕焼けが、
とても美しかった。

 

愛してる、と女が呟くと
男は そう、と微笑んだ。

 

二人の影は、長く長く伸びて
皆がかえってきた。