雷汞

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停留所のそばに、薬莢(ヤッキョウ)が落ちてた。

 

かつてそこにあった奪う意思は
事も無げに言葉持たぬ芥に。

 

とかく対極にあれ、とおさめられがちな
奪うことと与えること。

 

そこにあるボーダーの曖昧さ・寂寞とした靄は
狙って語られる本質の胡散臭さと似てる。

 

『うん。それちょっと何やら世界の為になりそうやないか。どうだろう。それよりこうしないか。』

 

と、繰り返される犬のマーキング。

 

跳ねる飛沫。 飛び散る未感情。

 

無駄に長い犬の小水のあと
薬莢だと思ってたそれは、
かつて子供の薬指でその威光を放った、おもちゃの指輪であることに気づいた。

 

気づいた のではなく、
おしっこによってねじまげられ(元に戻され)ただけで
無謀な現実によって鮮やかに醸造された現在なのかもしれなかった。

 

小僧、これにも小便を。
(むきだした打算を白目でさしだしながら)

 

犬、無視。