臆病で陰鬱なdj 500人による概要
茶色のコートを着た長身の女の子が うずくまった。
歩きながら煙草巻くのに気ぃとられてたので、
元気満タンでウマ跳び失敗する小学生よろしく
つんのめり覆いかぶさって、スッコロびかける。
「大丈夫?」
おおよそ大丈夫じゃない人間に
“あなた大丈夫じゃないよね” を言い渡す殺人フレーズで、ご機嫌をうかがってみる。
知り得ぬナニかのことを考えるのは、きっと大切なことだけれど
だからって
「がんばろうよ! 世界はほら! こんなに美しい!
おもしろき!こともなき世をおもしろく! シンサク=タカスギ! さあ!」
とか幸(さち)薄そうなモヤしっ子にいきなり励まされたら、それはそれでイライラする。
返事がない。
「なんか、あれ。 あれ呼ぼか?(救急車、ドイツ語でなんて言うんか思いつかんかった)」
『ううん、いいの。』
こっちを見た彼女の顔に、違和感。
なんか泣いてるみたいだった。
ぅぇ、しまった。思って煙草を巻き終わる。
「煙草吸う?」
『いいわ。ありがと。大丈夫』
大丈夫って言わなきゃいけない人生なんて、ごめんだ。
煙草の灰は、知らぬまに煙草の長さになっていて
地面に落ちる前にクツのサキにあたって、くだけた。
馬鹿みたく足を踏み鳴らして歩いてたので、
低くナガれる初冬の風と相まって
影にもならなかった。