ネアン

手垢のついた物言いだけど、
血液型の話をされるのがものすごく苦手だ。

『あなた、、、、型?』

と聞かれたら、必ず

「いえ、、、、型です。」

って、違うことを答えるようにしてる。
車にひかれた時なんかに、なまじ知り合いがいると、
命を落としかねない。

昔、生物の授業で、突然教師がいった。

『血液型占い、、、なんやあれ。』

彼女は、それからオモムロに藁半紙を配りはじめた。
なんでも、血液型によって人をカテゴライズする
向こう見ずで平和な世界を目の前で粉々にしようという主旨らしい。

その手段について詳しいことは忘れたけど、
生徒から集めたアンケートと
生徒による挙手、
それに学会のデータによる論破の仕方は
なんであの時あんなに「ほほう」となったのか不思議なぐらい、
すこぶるいい加減なものだった。
帰納法と、弁証法のあかんとこだけを
もっかい演繹した感じ。

今になって思えば、大好きだった彼氏と
血液型のことで喧嘩しただけかも知れなかった。

『岡本君、B型の人にどんなイメージをもってる?』
「、、、ジャイアン?」

我が意をえたり、という顔つきで彼女は言った。

「ジャイアンはA型よ。」

平たく言えば、
とにかくそういう感じの授業だった。

彼女の顔は、ネアンデルタール人そっくりで、
それは進化した人類へのアンチテーゼみたいだった。
皮肉で悲しい、アンセムだった。

その教師のおかげだかどうだかわからないけど、
とにかく立派な血液型占い蔑視型人間になった。
『、、型だよね? そーだと思った!』
違う血液型を答えて、そのリアクションをとられると
不意にネアンデルタール教師に報告したくなる。
「かかったわね、彼は、、、型よ」
と、また違う血液型を言って、
帰納法の裾野である新たな証拠を採集しようと努めるに違いない。

、、血液型うんぬん以前に、おまえに人の血は流れているのか。

名前をつけ、解釈し、たくさんの意味を与えて
人は安心したがる。
完全な理解、というものがもしこの世に存在するなら、
それはきっと、ますます人を孤独に追い込むだろう。

即興詩人マイアミさんの、ウタより。
『どうやらボクはアヤシまれてしまった。
そして
アヤシマレていることをカクされてしまった。』

 

頼むから僕に、輸血をしないでください。