ハカニ

去年の、夏。

 

27歳のドイツ人の女の子とその30歳の彼氏と、
3人でお墓を歩いた。

 

お墓、っていっても日本のそれみたく
日陰にひっそりって感じではなくて
こっちのは全員の墓石がオブジェみたいで
ちょっとしたテーマパークみたい。
不謹慎なことを言ってあれだけど。

 

こっちは土葬が多く、
亡骸は灰ではなく土の下にある。
上に植えられた眩しい原色の花々は、
人間の最後の仕事みたく咲き乱れて。

 

女の子が突然、「ちょっと」と言って、
日陰の薮のほうに入っていこうとする。

 

「なに?どしたの?」
「いや、ちょっと、おしっこ」

 

ちょっとテレて、女の子はそそくさ行ってしまった。

 

目のやりどこに困って、あっちを向く。

 

死体の上のアザヤカな花の色、目を刺す。

 

落ちたモノを拾って、
パクっと食べて笑う女の子が好きだったけど、
今度からは
墓で立ち(?)ションする女の子にしよう。

 

すてきやな、と思った。

 

そんなことを素敵やな、て思う了見の狭い自分自身を
素敵やないな、思った。